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              高齢者の法律問題

 Question2
 相続手続に必要なものを教えて下さい。

 Answer 

(1)相続の発生

 相続は、死亡によって開始します(民法882条)。各種機関で相続手続をするためには、まず、被相続人の死亡に関する公的な証明書が必要です。被相続人の死亡地、本籍地又は届出人の所在地の市役所、区役所又は町村役場に死亡届を提出し、被相続人の本籍地で除籍謄本を取得して下さい。

(2)遺言の確認

 次に、相続手続をするにあたっては、被相続人の遺言があるかどうかを確かめる必要があります。先に遺産分割を終わらせても、後で有効な遺言が見つかれば、遺言の内容が優先します。紛争を避けるためにも、まず遺言を探しましょう。
 遺言は、自筆証書遺言と公正証書遺言が用いられるのが一般的です。自筆証書遺言の場合は、保管場所がわからなければ探せませんが、公正証書遺言の場合には、全国の公証役場で検索してもらうことができます。被相続人の除籍謄本、被相続人の相続人であることが分かる戸籍謄本等、本人確認のための証明書(①免許証、パスポート、住基カード等の顔写真付きの公的証明書と認印又は②発行から3か月以内の印鑑証明書と実印)を準備して、公証役場で検索してもらいます。
 なお、自筆証書遺言は、裁判所で検認をしてもらう必要があり(民法1004条1項)、封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立ち合いがなければ開封できないものとされています(民法1004条3項)。

(3)相続人を調べる

 遺言で全部が解決しない場合には、やはり相続手続が必要です。相続手続をするためには、まず、誰が相続人であるかを確定しなければなりません。そのためには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍が全部必要です。事案によっては、何十通に及ぶこともあります。相続人が1人でも欠けていれば、遺産分割は無効となりますし、法務局も登記を受け付けてくれません。公的機関や金融機関で手続をするときは、廃棄等により追跡不能な場合を除いて、必ず全部の提出が必要です。
 とはいえ、これらを全部取寄せるのには、何か月もかかることもあります。はじめの段階では、被相続人の除籍謄本とご自身の戸籍謄本、ご自身が被相続人の子や配偶者でない場合には、先順位の相続人がいないことがわかる程度の戸籍が揃っていれば、ひとまず十分かと思います。

(4)相続財産の調査 ―預貯金の場合―

 相続財産としては、現金、銀行預金、郵便貯金、動産、不動産、有価証券等が想定されます。
 
銀行預金、郵便貯金については、ひとまず、預貯金通帳、預貯金証書を準備してください。どうしてもわからない場合は、(1)の除籍謄本と(3)の戸籍を全部揃えて窓口で申請すれば、取引履歴を教えてもらうことができます。

(5)同 ―不動産の場合―

 心当たりのある不動産については、法務局で登記簿謄本(全部事項証明書)を取得して下さい。市役所、区役所又は町村役場で固定資産評価証明書を取得しておくと、登録免許税の計算がスムーズです。他に、相続財産の評価の資料として、地図や公図があると有益です。
 不動産の特定ができない場合は、不動産の所在地を管轄する市役所、区役所又は町村役場で、被相続人の固定資産課税台帳(いわゆる「名寄せ」)を取り寄せて下さい。

(6)出金手続・名義変更手続

具体的な出金手続や名義変更手続については、遺言の有無、遺産分割の手続(協議、調停、審判の別)によって、必要なものが異なります(預貯金の場合、金融機関によっても微妙に取扱いが異なります)。
 一般的にいえば、(1)から(5)で述べたものに加えて、遺言執行者や相続人の実印と印鑑証明書が必要なことが多いでしょう。しかしながら、戸籍の取得や遺産分割には長い時間がかかることもあります。最初の段階で全員分の印鑑証明書を準備してもらっても、手続中に金融機関や公的機関が定める有効期限を過ぎてしまうこともしばしばあります。ひとまず、(1)から(5)までの資料を揃えて、弁護士、司法書士等に相談することをおすすめします。
                                    

馬 場    陽  

                                    (愛知県弁護士会所属)

                         2014.6.18作成

                         
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