高齢者の法律問題

 Question5
 平成25年度の税制改正により、平成27年1月1日から、相続税の計算が変わると聞きました。具体的には、どのように変わりますか?

 Answer 

(1)基礎控除額が4割減ります

 課税される遺産の総額は、「相続税の課税価格の合計額」から「遺産に係る基礎控除額」を差し引いて計算します(相続税法15条1項)。この「基礎控除額」は、平成26年7月現在、「5000万円+1000万円×相続人の数」とされています。つまり、現行法では、相続人が2人の場合、5000万円+1000万円×2=7000万円が基礎控除額となり、例えば遺産の額が7000万円を超えないようなケースであれば、相続税は課税されません。
 しかし、平成27年1月1日から、この基礎控除額は「3000万円+600万円×相続人の数」となります。これにより、相続税の課税対象となるケースが広がり、従来課税対象とされてきたケースでも、相続税額が増加します。
 たとえば、相続人が2人で「相続税の課税価格の合計額」が7000万円の場合、3000万円+600万円×2=4200万円が基礎控除額となり、2800万円が相続税の課税対象となります。

(2)税率が上がります

 次に、各法定相続人の課税標準が2億円を超える場合の税率が上がります。税率と控除額を記載した速算表は、下記のように変更されます(2億円以下の部分については、変更はありません)。

 取得価額          現 在       平成27年1月1日~ 1000万円以下       10%        10%
1000万円超・3000万円以下 15%-    50万円   15%-  50万円
3000万円超・5000万円以下 20%-  200万円 20%- 200万円
5000万円超・1億円以下  30%-  700万円 30%- 700万円
1億円超・2億円以下   40%-1700万円 40%-1700万円
2億円超・3億円以下   40%-1700万円 45%-2700万円
3億円超・6億円以下   50%-4700万円 50%-4200万円
6億円超         50%-4700万円 55%-7200万円

(3)「小規模宅地等の特例」の要件が緩和されます

 相続開始の直前まで、被相続人又は被相続人と生計を一にする親族が事業の用に供していた宅地等又は居住の用に供していた宅地等(土地又は土地の上に存する権利で、一定の建物又は構築物の敷地の用に供されているもの)は、一定の条件を満たした場合、一定の面積までの部分に限り、相続税の課税価格の計算上、減額して評価することができます(「小規模宅地等の特例」)。自宅の敷地の場合、最大で80%も減額して計算することが可能です。
 この「小規模宅地等の特例」の適用については、次のとおり、納税者に有利な改正がされています。

ア 面積の拡大

 従来、居住用宅地について「小規模宅地等の特例」の対象となる面積の上限(限度面積)は、240㎡とされていましたが、平成27年1月1日からは、限度面積が330㎡まで拡大されます。

イ 同居要件の緩和

 「小規模宅地等の特例」の適用がある「特定居住用宅地等」といえるためには、例えば、被相続人の自宅の敷地の場合、取得者が被相続人の配偶者であるか又は同居の親族であることが要件とされていました(同居でない親族の場合、被相続人に配偶者も同居の親族である相続人もなく、相続開始前3年以内に日本国内にある自己又は自己の配偶者の所有する家屋に居住したことがないことなどの複雑な要件がありました)。
 この「同居」には、いわゆる分離型の二世帯住宅に住んでいる場合や、被相続人が老人ホーム等に入居している場合は原則として含まれないものと解されてきました。しかし、平成25年度の税制改正により、前者については「同居の親族」の要件を廃し、「被相続人の居住の用に供されていた1棟の建物に居住していた親族」と改められたことから、分離型の二世帯住宅に住む親族も特例の適用を受けられることになりました(ただし、区分所有建物の場合は特別の注意が必要です)。後者についても、要介護認定、要支援認定、傷害支援区分の認定を受けて被相続人が一定の施設に入居していた場合には、一定の要件のもとに特例が適用されるなど、大幅に要件が緩和されています。
 こちらの改正は、平成26年1月1日から施行されています。

弁護士 馬 場  陽 

(愛知県弁護士会所属) 

2014.7.8作成 

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