相続が発生してから、1年間でしなければならないことを教えて下さい。 |
相続人は、必ずしも死亡届の届出人となるわけではありません。しかし、同居の親族は届出義務者とされており(戸籍法86条1項)、その他の親族も届出資格が認められています(戸籍法87条)。死亡の届出は、7日以内とされています(戸籍法86条1項)。
(2)相続放棄・限定承認(3か月)
相続人が相続放棄をする理由は様々です。①被相続人の資産より負債が多い場合、②被相続人の負債が不明の場合、③他の相続人に相続財産を集中させたい場合などが代表的です。相続放棄の申述は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内にしなければなりません(民法915条)。この期間内に相続放棄をしなければ、法律により、相続を単純承認したものとみなされます(民法921条)。
相続放棄と類似したものに、「限定承認」という手続があります(民法922条)。遺産の範囲で負債を弁済し、プラスがある場合には相続を承認する方法で、負債の額が不明の場合に効果的な手法ですが、「みなし譲渡所得課税」といって、単純承認の場合にはかからない税金が発生する点に注意が必要です(所得税法59条)。この限定承認も、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内にしなければ、単純承認したものとみなされます(民法921条)。
(3)準確定申告(4か月)
年の途中で納税者が死亡した場合、相続人は、1月1日から死亡日までに確定した所得金額及び税額を計算して、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告と納税をしなければなりません。これを準確定申告といいます(所得税法125条)。
(4)相続税申告(10か月)
相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行わなければなりません(相続税法27条)。
遺産分割が未了の場合は、民法に定める法定相続分又は包括遺贈の割合に従って財産を取得したものとして相続税の計算をし、申告と納税をすることになります。
この場合、「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額の軽減の特例」などの適用がありませんので、注意が必要です。
もちろん、その後、遺産分割が完了し、その分割に基づき計算した税額と申告した税額とが異なるときは、実際に分割した財産の額に基づいて修正申告又は更正の請求をすることができます。しかし、前記の特例が適用されるのは、原則として申告期限から3年以内に分割が行われた場合に限られますので(租税特別措置法69条の4Ⅳ)、係争が長期化した場合には、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出し、税務署長の承認を受けておく必要があります。
(5)遺留分減殺請求(1年)
遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅します。相続開始から10年を経過したときも、同様です(民法1042条)。
弁護士 馬 場 陽
(愛知県弁護士会所属)
2014.7.8作成