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法定利率 (改正民法の施行に伴う実務上の注意点)

法定利率 (改正民法の施行に伴う実務上の注意点)

  馬場 陽

はじめに

令和2年(2020年)4月1日施行の改正民法(平成29年法律第44号)について、前回、消滅時効の注意点を説明しました。

今回は、法定利率が問題になるケースを考え、それぞれの場合に新法・旧法のいずれが適用されるのかを調べてみたいと思います。なお、法定利率は、約定利率が法定利率よりも高い場合を除き、原則としてそのまま遅延損害金の率となります(民法419条1項)。そこで、以下では、実務上も登場頻度の高い遅延損害金について検討していくことにします。

1 改正法の内容

法定利率に関する新法の条文は、次のとおりです。

第404条

1 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。

2 法定利率は、年3パーセントとする。

3 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年を1期とし、1期ごとに、次項の規定により変動するものとする。

4 (略)。

5 (略)。

2 改正の要点

改正前の民法は、法定利率を年5分(5パーセント)と定めていました(旧404条)。また、商法では、商行為によって生じた債務の法定利率は年6分(6パーセント)と定められていました。

平成29年(2017年)民法改正により、法定利率は年3パーセントに引き下げられ、以後、3年ごとに見直しが行われることになりました。さらに、商事法定利率を定めた商法の規定も削除されましたので、新法施行後は、商行為によって生じたものか否かを問わず、法定利率は年3パーセントということになります。

3 附則(平成29・6・2法44)

それでは、附則の定めはどうなっているでしょうか。

遅延損害金の率については、附則17条3項があり、「施行日前に債務者が遅滞の責を負った場合における遅延損害金を生ずべき債権に係る法定利率については、新法419条1項の規定にかかわらず、なお従前の例による。」としています。つまり、施行日前に遅滞の責を負ったのであれば新法が、施行日後に遅滞の責を負ったのであれば旧法が適用されることになります。

わかりにくいのは、附則17条1項が「施行日前に債権が生じた場合(施行日以後に債権が生じた場合であって、その原因である法律行為が施行日前にされたときを含む。附則第25条1項について同じ。)におけるその債務不履行の責任等については、……なお従前の例による。」と規定していることです。附則17条1項だけを読むと、法定利率についても「施行日前に債権が生じたか否か」で新法・旧法の適用が分かれるように読めますが、法定利率に関しては別に3項があり、「施行日前に遅滞の責を負ったか否か」で適用法令が区別されることに注意が必要です。

4 具体例

 具体例で考えてみましょう。

[例1]2020年3月1日締結の売買契約(遅延損害金の率について約定はない)において、代金支払債務の弁済期が2020年5月1日と定められたとします。この弁済期は確定期限ですから、弁済期に代金の支払がなければ、債務者(買主)は、その期限が到来したときから遅滞の責任を負います(民法412条2項)。このケースでは、債務者(買主)は新法施行前(2020年4月1日より前)に遅滞の責を負っていないので、代金支払債務については新法の法定利率(年3パーセント)が適用されます。

[例2]2020年3月1日締結の売買契約(遅延損害金の率について約定はない)において、代金支払債務の弁済期を定めなかったとします。2020年3月20日、債権者(売主)は、債務者(買主)に対し、上記売買代金の請求書を発行し、2020年3月1日に債務者(買主)はこの請求を受領しましたが、2020年5月1日になっても買主は代金を支払いません。弁済期の定めがないのときは、債務者(買主)は、履行の請求を受けたときから遅滞の責任を負います(民法412条3項)。このケースでは、債務者(買主)は新法施行前(2020年4月1日より前)に遅滞の責を負っているので、上記の代金支払債務については旧法の法定利率(民事債権であれば年5パーセント、商事債権であれば年6パーセント)が適用されます。

5 契約の自動更新の場合は?

 法定利率についても、新法施行前に締結された契約を新法施行後に更新したとき、新法が適用されるのか、旧法が適用されるのかという問題があります。

 この点については、前回、消滅時効について解説したところがそのまま当てはまります。附則には明文の定めはありませんが、現時点で最も有力な見解は、何らかの合意によって更新されたといえるもの(たとえば、業務委託契約等)については更新後の契約について新法を適用し、法令によって強制的に更新されたといえるもの(たとえば、借地借家法26条1項によって更新された建物賃貸借契約)については更新後も旧法を適用する、というものです(筒井健夫・村松秀樹編著『一問一答 民法(債権関係)改正』(商事法務、2018年)383頁参照)。しかし、賃貸借契約を例にとってみると、附則34条2項は、施行日後に更新された賃貸借契約について新法604条2項が適用されるとしています。この反対解釈として、更新後は新法604条2項を除きすべて新法が適用されない(旧法が適用される)という読み方もできそうで、実務に混乱を生じることが懸念されます。

2020年3月26日

※ この記事は、2020年3月26日時点の法令に基づいて解説をしています。


弁護士,大津町法律事務所(愛知県弁護士会)

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