離婚時の養育費の一括払いにはメリットもあるが税法上のリスクなどもある
1.定期給付が原則
養育費の支払いは、月々何円という形で定められるのが通常です。
当事者間の合意によって、異なる支払い方法をとることもありますが、裁判になれば、ほとんどの場合、毎月の給付額を定める内容の審判や判決が出ます。
2.一括払いのメリット
それでは、どうして当事者は、養育費の一括払いを求めるのでしょうか。
権利者(養育費をもらう方)としては、
- 義務者(養育費を支払う方)と子どもが疎遠になるにつれて、次第に養育費が支払われなくなるのではないか
- 義務者が途中で失業してしまったら、定められた養育費が支払われなくなるのではないか
といった不安があり、義務者の経済的状態が安定しているうちに将来の分まで養育費を受け取ってしまいたいと考えます。
他方、義務者のほうでも、
- 将来の経済的状態まではわからないので、今お金があるうちに一括で支払を済ませてしまいたい
といった考えがあって、一括払いを希望します。
中には、権利者・義務者に共通理由として、
- お互い新しい生活があるので、離婚した当事者と関わりをもちたくない
という場合もあるかも知れません。
そこで、当事者間の合意によって、養育費の一括前払いを取り決める例が見られますが、これには、リスクがないわけではありません。
3.一括払いのリスク
(1)物価の変動
1つ目のリスクは、物価の変動等の経済的事情の変化です。通常、養育費の支払いは、子どもが成人するまで、長いときは20年ちかく続きます。
養育費の額は、合意の時点での物価をもとに決められますので、子どもが成人するまでの間に物価が高騰したりすると、先に受け取った養育費の金額が物価に比して少なすぎるという状態が生じ得ます。
また、支払う方としても、互いの経済的環境が変わって、養育費の額を減額しようにも、すでに合意して支払ってしまっているので、減額が難しくなるという問題もあります。
一括払いを合意するときは、このようなリスクを互いに折り込んで合意をしなければなりません。
(2)中間利息控除
次に、中間利息控除の問題があります。
これは、本来であれば将来にわたって分割して受け取るべき金員を一括で受け取ることで、権利者側に、本来の履行期までの運用利益が発生しているのではないかという問題です。
経済的実態からみれば高額ですが、2015年6月現在の法定利率は年5パーセントですので、将来受け取るべき金員について、年5パーセント分の利息を控除して支払うべきではないのか、ということが一応検討されなければなりません。
(3)贈与税
最後に、贈与税です。
将来の養育費について、権利者には、具体的な給付を受ける権利が発生していません。
その状態で、お金を受け取ってしまえば、これは贈与を受けたものと考えられ、贈与税が発生すると考えられています。
4.リスクを十分検討してから判断を
以上のとおり、いろいろなリスクはありますが、当事者間の合意によって養育費の一括前払いをすること自体は、違法ではありません。
リスクについて互いに納得した上で、真摯な合意が成立するのであれば、互いにメリットもあり、十分検討に値する方法だと考えます。
弁護士 馬場 陽
(愛知県弁護士会)
2015年6月7日現在施行されている法令に基づく解説です。