慰謝料に相場はないが、100万~300万円が多い
1.不倫(不貞行為)の慰謝料に相場はない
不倫(不貞行為)は、民法709条にいう不法行為にあたり、不倫をした配偶者と不倫相手は、不倫をされた配偶者に対して慰謝料を支払わなければなりません。
このことは、今では、かなり広く知られるようになりました。
それでは、不貞慰謝料の「相場」は一体いくらなのでしょうか。
結論からいうと、今のところ、どのような事案にもあてはまる「相場」のようなものはありません。
2.裁判例で多いのは100~300万円
とはいえ、裁判になれば、ある程度の傾向というものがみられます。
最近の裁判例では、100万円から300万円の慰謝料を認めたものが多いようです。
少数ではありますが、400万円、500万円の慰謝料を認めた裁判例もいくつか存在しています。
この損害賠償債務は、不貞配偶者と不倫相手の不真正連帯債務です。学説では、不貞をした配偶者のほうが第三者である不倫相手よりも責任が重いと考えるのが一般的です。
これらの傾向は、現時点での婚姻に対する社会の価値観を反映したもので、今後、社会の価値観に変化があれば、慰謝料の額もその影響を受けて変動するものと予想されます。
3.弁護士費用や調査費用の一部を支払ってもらえる
次に、不貞の慰謝料請求をするために要した弁護士費用や調査費用は、相手に支払ってもらえるのでしょうか。
これもよくある質問です。
示談交渉や調停の場合、弁護士費用や調査費用を相手に負担させることはあまり一般的でなく、各自の負担とすることが多いように思います。
これに対し、裁判をして勝訴した場合には、弁護士費用の一部や調査費用の一部が損害として認められることがあります。
とはいえ、これも裁判に要した全額が認められるわけではなく、相当因果関係が認められる範囲が損害として認められるに過ぎませんので、注意が必要です。
これらは、厳密には慰謝料ではありませんが、同じ不法行為による損害賠償として、慰謝料と同時に相手に請求することができます。
4.最後は総合的判断
結局のところ、慰謝料の額の目安を見極めるためには、不貞の時期、不貞期間、婚姻期間、不倫当時の夫婦関係、夫婦(不倫相手に請求する場合は不倫相手)の年収、不倫が婚姻生活に与えた影響、不倫をされた配偶者の精神的状態、各当事者の落ち度の程度、不倫発覚後の対応などの様々な要素を総合的に考慮する必要があります。
すぐれて法的な判断となりますので、一度、法律専門家の意見を聞いてみることをお勧めします。
弁護士 馬場 陽
(愛知県弁護士会)
2015年5月27日現在の法令に基づく解説です。