名古屋の企業法務、離婚、相続、交通事故は、大津町法律事務所(弁護士 馬場陽)愛知県弁護士会所属

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企業のセクハラ対策

企業のセクハラ対策

事業主には、厚労省の指針に従ったセクハラ対策が求められます。

1.セクハラ対策の必要性

 平成26年度の均等室調停会議による調停の申請受理件数68件のうち、セクシュアルハラスメント(以下「セクハラ」という)の案件は、全体の64.7パーセントに当たる44件といわれています。
 事業主は、職場のセクハラ問題について労働者からの相談に応じ、必要な体制を整備するなどの雇用管理上必要な措置を講じる義務を負っています(男女雇用機会均等法11条)。
 企業には、リスク管理の一環として、セクハラ対策を進めることが求められています。

2.対価型セクハラと環境型セクハラ

 職場におけるセクハラには、対価型セクハラと環境型セクハラがあります。

(1)対価型セクハラ

対価型セクハラとは、職場において行われる労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、当該労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けることであって、典型例としては、

  • 事業主が労働者に性的な関係を要求したが拒否されたため、解雇する
  • 上司が部下の体を触ったが抵抗されたため、部下について不利益な配置転換をする
  • 事業主が労働者の性的な事柄を公然と発言したところ抗議されたため、降格する

などがあります(「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」平成18年厚生労働省告示第615号2(5))。

(2)環境型セクハラ

 環境型セクハラとは、職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることです。
典型例としては、

  • 上司から体を触られたため苦痛に感じて就業意欲が低下している
  • 同僚から取引先に対して性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布され、苦痛に感じて仕事が手につかない
  • 抗議しているにもかかわらず、事務所にヌードポスターが掲示されているため、苦痛に感じて業務に専念できない

などが挙げられています(前記告示2(6))。

3.事業主が講ずべき措置

 事業主が雇用管理上講ずべき措置は、大きく、

  1. )事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
  2. )相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  3. )事後の適切かつ迅速な対応
  4. )1~3までの措置と併せて講ずべき措置

に分かれます。

(1)事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

 セクハラの内容及びセクハラがあってはならない旨の方針を周知・啓発するほか、就業規則等にセクハラに対する懲戒規定を整備し、セクハラを行った者に対しては処分の可能性があることを周知・啓発する必要があります。

(2)相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

 相談窓口を設置したり、外部専門家(弁護士等)に相談窓口業務を委託するだけでなく、相談担当者と人事部門との連携を強化したり、対応マニュアルを作成するなどして、相談窓口が適切に機能するよう配慮することが求められます。

(3)事後の適切かつ迅速な対応
・事実関係の迅速かつ正確な調査

まずは、被害者と行為者から事実関係を聴取します。事実関係に争いがある場合は、さらに調査の範囲を広げる必要があります。
 事実調査が不十分なまま拙速に行為者を処分したり、うやむやに事態の収束を図ろうとすると、かえって紛争の種が拡大しかねません。
 事業主の努力によっても事実関係の確認が困難な場合には、中立の第三者機関に紛争処理を委ねることも検討しましょう。

・被害者に対する配慮の措置

 被害者の労働条件の回復、行為者から被害者への謝罪、行為者と被害者の隔離のための配置転換、メンタルヘルス不調への対応のほか、被害者に対して適正な解決案を講じることを検討しましょう。

・行為者に対する適正な措置

 就業規則等の規定に基づき行為者に対する懲戒処分を検討するほか、被害者への謝罪や行為者と被害者の隔離のための配置転換も検討しましょう。

・再発防止のための措置

 社内報、パンフレット、ウェブサイトによる周知の徹底、研修会、講習会の実施等がこれに当たります。

(4)1~3までの措置と併せて講ずべき措置
・プライバシーの保護

 相談者・行為者のプライバシーが守られるよう相談担当者用のマニュアルを策定したり、相談担当者に必要な研修・講習を受講させることなどがこれに当たります。

・不利益取扱いの禁止の周知・啓発

 セクハラを相談したり、調査に協力したことをもって労働契約上不利益な取扱を受けないことを就業規則等に明記し、周知・啓発することがこれに当たります。

4.事件・紛争に発展したときは

 不幸にして事件に発展したときも、基本的な考え方は上記(1)~(4)と変わりません。
 迅速かつ正確に事実関係を調査し、被害感情にも配慮しながら、労働法令、就業規則等の諸規定に基づいて適切な対応を心がけましょう。

この記事の作成にあたっては、厚生労働省 都道府県労働局雇用均等室「事業主の皆さん職場のセクシュアルハラスメント対策はあなたの義務です!!」を参照いたしました。

なお、この記事は、2015年7月14日現在施行されている法令に基づく解説です。

弁護士 馬場 陽
(愛知県弁護士会所属)

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