名古屋の企業法務、離婚、相続、交通事故は、大津町法律事務所(弁護士 馬場陽)愛知県弁護士会所属

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中小企業の社長が解雇で気をつけること

中小企業の社長が解雇で気をつけること

普通解雇、懲戒解雇、整理解雇、それぞれ解雇の有効要件を慎重に検討しましょう。

1.解雇の法的性質と種類

 使用者からの労働契約の一方的解約を解雇といいます(→解雇と他の退職事由の違いについては、「中小企業の社長が知っておきたい自主退職、解雇、合意退職の違い」をご覧ください)。
 解雇には、大きく分けて

  • 普通解雇
  • 懲戒解雇
  • 整理解雇

の三種類があります。
 以下、それぞれについて、解雇が有効となる要件をみていきましょう。 

2.普通解雇

 普通解雇は、傷病や勤務能力の欠如、勤務態度不良などを理由とする一般的な解雇です。
 多くの企業では、就業規則の中に解雇事由が定められています。
 もっとも一般的な解雇であり、期間の定めのない雇用契約については民法上自由に認められているものですが(民法627条)、労働者保護の観点から、労働法上の様々な規制を受けます。
 例えば、就業規則の中に、傷病により業務に耐えられないことが解雇事由として定めてある場合でも、傷病が使用者の業務に起因する場合には、療養期間及びその後30日間は解雇ができません(労基法19条)。
 また、労働契約法16条により、客観的合理的を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効となります(解雇権濫用法理)。
 解雇権濫用法理に関する著名な裁判例として、次のようなものがあります。
 宿直勤務のアナウンサーが寝坊してニュース番組に穴をあけるという放送事故を2週間で2回繰り返したことを理由とする普通解雇について、最高裁は、

  • 悪意ないし故意によるものではないこと
  • 先に起きてアナウンサーを起こすはずのファックス担当者も寝過していたこと
  • 事故後、謝罪をしたり、一刻も早くスタジオ入りしようとした努力が認められること
  • 寝過しによる放送の空白時間はさほど長時間とはいえないこと
  • 会社においてニュース放送の万全を期すべき何らの措置も講じていなかったこと
  • これまで放送事故歴がなく、平素の勤務成績も別段悪くないこと
  • 第二事故のファックス担当者はけん責処分に処せられたにすぎないこと
  • 会社において従前放送事故を理由に解雇された事例はなかったこと

などの諸事情を考慮して、解雇は必ずしも社会的に相当なものとして是認することはできないとしています(最判昭和52年1月31日労判268号17頁)
 普通解雇をする場合、30日前に解雇を予告するか、又は30日分の賃金を解雇予告手当として対象者に支払う必要があります(労基法20条)。

3.懲戒解雇

 就業規則に定める懲戒解雇事由に該当した場合に、制裁として行われる解雇を懲戒解雇といいます。
 普通解雇と比べると、30日の予告期間や30日分の解雇予告手当が保障されておらず、また退職金が不支給とされている場合が多いなど、労働者にとって不利益が大きいのが特徴です。
そのため、懲戒解雇の有効性は、普通解雇よりもさらに厳格に判断される傾向にあります。

 懲戒手続一般に共通の要件ですが、懲戒解雇が有効なものと認められるためには、就業規則に定められている懲戒解雇事由に該当することが必要です。
 したがって、従業員に重大な非違行為があっても、就業規則に懲戒解雇事由として定められていなければ懲戒解雇をすることはできません。それでも無理に懲戒解雇をすれば、その懲戒解雇は、それだけで無効となります。
 また、就業規則に定められている懲戒解雇事由に該当する場合でも、処分が有効となるためには、適正手続の履践や処分の相当性が要求されます。
 具体的には、処分に先立って告知・聴聞の機会を与えたかどうか、解雇に先立って注意やけん責等の軽い処分をして改善の機会を与えたかどうかなどが審理され、懲戒解雇以外の方法でも企業秩序が十分維持できるような場合には、懲戒解雇は社会的相当性を欠くものとして無効とされる傾向にあります。

4.整理解雇

 企業が経営不振等により人員を削減するために行われる解雇を整理解雇といいます。
 整理解雇の有効性判断を行った裁判例では、伝統的に、

  • 人員整理を行う経営上の必要性
  • 解雇を回避するための努力が尽くされたこと
  • 解雇の対象となる人員の選定が客観的かつ合理的な基準により選定されたこと
  • 労働者又は労働組合との間で誠実に協議がもたれたこと

といった4つの点が検討されています。
例えば部門廃止による整理解雇の場合でも、他部門で人員を吸収する余地があったかどうかにより、整理解雇の有効性判断に影響があるものと考えられています(東京地判平成15年9月25日労判863号19頁)

5.解雇無効のリスク

 以上のとおり、裁判における解雇の有効性判断は、使用者にとってかなり厳しいものとなることが予想されます。
 解雇が無効となれば、その従業員は、解雇の日にさかのぼって従業員の地位にあったことが確認されます。
 その結果、企業は、解雇の日にさかのぼって、その従業員に賃金を支払わなければなりません。
 対象者の給与水準と係争年月によっては、数千万円の支払いが命じられることも珍しくありません。
 解雇をめぐる紛争は、中小企業にとって致命的なダメージを残しかねませんので、なるだけ解雇前に専門家の意見を聴取することをおすすめします。

※2015年7月7日の法令に基づく解説です。

弁護士 馬場 陽
(愛知県弁護士会所属)

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