地域労組(合同ユニオン)との団体交渉では、誠実交渉義務に反しない範囲で毅然と対応しましょう。
1.地域労組(合同ユニオン)とは
かつて、労働組合といえば、企業ごとに常勤の従業員(正社員)で組織する「企業内組合」が一般的でした。
しかし、最近では、企業別組合を組織できない中小企業の従業員、非正規労働者の受け皿として、特定の企業への所属を加入条件としない地域労組や合同ユニオンと呼ばれる労働組合が活躍しています。
そのため、最近では、企業別組合を持たない中小企業から、団体交渉の交渉代理や労働組合対策のご相談をいただく件数が増加しています。
2.地域労組(合同ユニオン)の特徴
地域労組は、特定企業の正社員で組織される企業内組合と違い、幹部組合員と会社の関係が希薄であることが1つの特徴となっています。
そのためかどうかはわかりませんが、会社と組合(従業員)の共存共栄といった意識には乏しくなりがちで、個別の案件で徹底的に成果を求める傾向が強いともいわれます。
3.団体交渉を申し込まれたら
このような地域労組から突然団体交渉を申し込まれたら、会社としてどのように対応すべきでしょうか。注意すべき点はたくさんありますが、そのうちいくつかをご紹介します。
(1)組合員の把握
まず、その組合に加入している自社の社員を把握する必要があります。
組合との間で団体交渉が行われ、合意に達した場合、合意の内容を「和解書」という書面に残します。ところが、一定の条件を満たしていると、この和解書のうち、労働条件や労働組合との間のルールに関する部分が「労働協約」(労働組合法14条)としての効力をもち、同じ組合にいる他の従業員に対して効力をもってしまいます。
とくに、労働者の待遇に関する部分は就業規則や個別労働契約に優先する効力をもち(規範的効力)、組合員である従業員全員との関係で労働条件の最低基準となりますので(労働組合法16条)、誰が組合員であるかを把握することが必要となるのです。
(2)団交応諾義務と誠実交渉義務
次に、会社には団交応諾義務・誠実交渉義がありますので、正しく申し込まれた団体交渉を無視することはできませんし、組合からの要望を完全に無視することもできません。
とはいえ、これは、会社は組合の要望にすべて応じなければならないという意味ではありません。正当な理由で交渉を拒否することや、合理的理由で要望を拒否することまでは、禁止されていないのです。
問題は、正当な理由、合理的理由とはどの程度の理由をいうのかという点です。高度な法的判断となりますので、専門家の助言を受けることをおすすめします。
(3)団体交渉の日時、場所、人数
その他、交渉日時、交渉場所、交渉人員の設定にも十分な注意が必要です。
一般論としては、業務に支障のない時間に、組合事務所以外で、理性的討議ができる人数で、実施することをおすすめしています。
会社側の交渉担当者を誰にするかについては、代表者、担当役員、弁護士といった選択肢があります。それぞれに一長一短がありますので、事案に応じて適切な交渉担当者を選択しましょう。
4.専門家との協同
いずれにしても、団体交渉では、いくつかの局面で、迅速な経営判断と法的判断が求められます。経営者と法律家の協同が不可欠な事件類型ですので、お早目のご相談を推奨いたします。
弁護士 馬場 陽
(愛知県弁護士会所属)
2015年5月10日現在の法令に基づく解説です。
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