1 遺産分割調停とは
(1)調停は話し合い
相続人同士で遺産分割協議がまとまらないときは、まず、家庭裁判所で遺産分割調停をするのが一般的です。調停では、家庭裁判所の裁判官と調停委員からなる調停委員会が間に入り、申立人、相手方それぞれの言い分を聞いて、合意を目指します。
間に調停委員会が入るので、対立する当事者とは、顔を合わせずに話し合いを進めることができます。
(2)相続人全員が出席する
このように、家庭裁判所が間に入るとはいえ、遺産分割調停は1種の話し合いですから、全員が出席するのが原則で、全員が合意しなければ、調停は成立しません。
(3)費用はどのくらいかかるか
手数料として、被相続人1人につき1200円の収入印紙が必要です。その他に、裁判所が当事者に書類を郵送するための郵便切手を予納しなければいけません(※1)(※2)。
(4)時間はどのくらいかかるか
調停の期日は、平均して1か月に1回の頻度で指定されます。調停が終わるまでの期間は、事案によりまちまちです。2~3か月で終わることもあれば、1年以上続けても話し合いが終わらないこともあります。
※1 郵便切手の金額については、後述します。
※2 別途、特別代理人報酬や鑑定等の費用が発生する場合があります。
2 遺産分割調停の申立て
(1)申立書を書いてみよう
遺産分割調停の申立書を書いてみましょう。申立書の書式は、裁判所のウェブサイトでダウンロードできるほか、家庭裁判所の受付で受け取ることができます。
(2)提出先(管轄裁判所)
提出先は、当事者全員の合意により定めた家庭裁判所または相手方の住所を管轄する家庭裁判所です。相手方が2人以上いる場合は、どちらにも管轄があります。
(3)目録を作ろう
遺産分割調停申立書に添付する目録として、次のようなものがあります。
- 遺産目録(※3)
- 特別受益目録(※4)
- 当事者目録(※5)
※3 被相続人の遺産を記載した目録です。
※4 被相続人の生前に当事者が受けた特別受益を記載した目録です。
※5 申立人と相手方全員の氏名、生年月日、住所、本籍を記入します。分からない場合は、添付書類として取寄せた戸籍や住民票を見ながら記入して下さい。
(4) 印紙を貼ろう
郵便局やコンビニで収入印紙1200円(被相続人が1人の場合)を購入し、申立書に貼って完成です。被相続人が2人以上いる場合は、1200円×被相続人の人数分の収入印紙を貼ってください。
(5) 郵便切手を買おう
家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てるときは、裁判所から当事者に書類を郵送してもらうための郵便切手として、500円×2×当事者数、100円×2×当事者数、50円×2×当事者数、82円×20、10円×20、2円×10、1円×10を同封します(当事者数が5人までの場合)。
3 遺産分割調停に必要な書類
(1)添付書類
遺産分割調停を申立てるためには、調停申立書、各種目録のほかに、次のような書類を添付する必要があります。
(2)身分関係
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍謄本、改正原戸籍謄本の原本)
- 相続人全員の現在の戸籍謄本(3か月以内の原本)
- 被相続人の除票又は戸籍の附票(原本)
- 相続人全員の住民票(3か月以内の原本)
(3)遺産関係
- 遺産に不動産がある場合は、登記事項証明書と固定資産評価証明書(3か月以内の原本)
- 遺産に預貯金がある場合は被相続人死亡時の残高証明書のコピー、通帳のコピー、証書のコピー
- その他、有価証券の残高証明書のコピーや車検証のコピーなど
(4)遺言関係
- 遺言がある場合には、遺言書のコピー。
4 遺産分割審判の手続
(1)審判とはどんなもの
調停で話し合いがまとまらず、さらに調停を続けても合意にいたる見込みがないときは、調停は不調となり、審判という手続に移行します。
審判では、家庭裁判所の裁判官(家事審判官)が、提出された書類や当事者から聞き取った内容など、一切の事情を考慮して、裁判により遺産を分割します。
(2)誰かが欠席しても進められる
このように、審判は話し合いではありませんので、相続人のうちの誰かが意固地になって出席をしてくれないような場合でも、手続を進めることができます。
(3)費用はどのくらいかかるか
調停から審判に移行した場合、さらに手数料を追納する必要はありません。ただし、調停で郵便切手を使い切ってしまった場合など、郵便切手の追納が必要となる場合があります。
(4)時間はどのくらいかかるか
遺産の範囲や評価に争いがなく、調停で必要な書類が全部揃っているならば、審判が出るまでの期間は1~3か月くらいだと思われます。
遺産の範囲について争いがある場合は、遺産分割の前提問題として、何が遺産で何が遺産でないのかを民事訴訟で解決しておかなければなりません。この場合、数か月から数年かかることもあります。遺産の評価に争いがある場合には、鑑定をしなければなりません。この場合も、数か月は余分に時間がかかります。
5 即時抗告―審判に不満があるとき―
(1)即時抗告をしないと
家庭裁判所がした遺産分割の審判に不満があるときは、上級の裁判所である高等裁判所に不服申立をすることができます(即時抗告)。定められた期間内に申立をしないと、審判が確定し、あとから審判の内容を争うことはできなくなってしまいます。
(2)告知の翌日から2週間以内に
即時抗告ができるのは、審判の結果が告知された日の翌日を1日目として14日間です。
(3)提出先に注意
即時抗告申立書の宛先は高等裁判所ですが、提出先は家庭裁判所となっていますので、注意が必要です。
※2016年2月4日の情報に基づいて執筆されています。