名古屋の企業法務、離婚、相続、交通事故は、大津町法律事務所(弁護士 馬場陽)愛知県弁護士会所属

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債権回収

消滅時効を中断しよう

1 時効の中断とは?

 2月1日の記事では、意外と短い取引上の債務の消滅時効についてお話をさせていただきました。
 今回は、消滅時効を止める(「中断」といいます)方法について、お話をしたいと思います。

2 3つの中断事由

 時効の中断事由として民法が定めるのは、

  • 請求
  • 差押え、仮差押え又は仮処分
  • 承認

です(民法147条)。いずれも、時効が完成する前に行わなければ、中断の効力を生じません。

(1)請求

 「請求」とは、債務者に対して債務の履行を求めることをいいます。一般に、「請求」という場合、裁判外で督促状を出すようなものも含まれますが、時効中断事由としての「請求」は、訴訟の提起、支払督促の申立等、裁判手続を利用して履行を求めるものに限られます。
 というのも、民法は、裁判外の「催告」は、その後、6か月以内に「裁判上の請求」や「支払督促の申立て」など裁判所での手続をとらなければ、時効中断の効力を生じないと定めているからです。
実務上は、時効完成までに速やかに裁判をすることが難しい場合には、内容証明郵便でいったん催告をしておき、それから6か月以内に裁判を提起するという流れが一般的です。

(2)差押え、仮差押え又は仮処分

 「差押え、仮差押え又は仮処分」とは、要するに、債務者の財産に対する強制執行の手続や、強制執行の準備のために債務者の財産を保全する手続です。これらも、裁判所の関与で行わなければなりません。

(3)承認

  (1)と(2)が、債務者の協力がない場合に検討すべき時効の中断の方法であったのに対し、「承認」は、債務者に改めて債務があることを認めてもらうやり方で、主に債務者の協力が得られる場合に、裁判によらない簡便な方法として利用されます。
 実務上は、のちに承認の事実が争いになることを避けるため、書面で承認をもらうようにしています。

3 改正民法案では

 第189回国会に提出されている改正民法案では、「協議を行う旨の合意による時効の完成猶予」という制度が新設される予定となっています(151条)。
 それによると、権利について協議を行う旨の合意が書面でされたときは、(1)その合意があった時から1年を経過した時、(2)その合意において当事者が協議を行う期間(1年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時、(3)当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から6か月を経過した時、のいずれか早い時まで、時効は完成しないこととされています。

※2016年3月15日現在の情報に基づく解説です。

弁護士 馬場 陽
(愛知県弁護士会所属)

この記事は、税理士法人BlueSky事務所報2016年3月号に執筆したものをweb用に編集し、発行者の許可を得て転載しています。

 

請負代金、売掛金、飲食代の消滅時効

1.いろいろな時効

 みなさんは、「時効」という言葉をご存じでしょうか。刑事ドラマや犯罪のニュースで話題になる「公訴時効」、物を一定の条件で一定の期間占有しているとその物の所有権が取得できる「取得時効」など、様々な種類の時効があります。
 中でも、一定の状態で一定の期間が経過すると権利が消滅してしまう「消滅時効」は、事業主のみなさんにとって、最も関心がある時効ではないでしょうか。

2.時効期間の計算方法

 消滅時効の期間は、弁済期があるときは、弁済期の翌日から計算します(民法166条1項、140条)。例えば、平成28年1月25日に弁済期を迎える債権は、平成28年1月26日を1日目として10年目となる平成28年1月25日が終わると、時効が完成します。

3.バラバラの時効期間

 2では、10年で時効が完成すると説明しました。
 これは、民法で、一般的な債権の消滅時効期間が10年とされているからです(民法167条)。
 しかし、これには、商法に特則が定められています。
 商法によると、商取引によって生じた債権は、5年で消滅することとされています(商法522条)。
 それでは、事業主のみなさんが持っている事業上の債権は、5年の商事消滅にかかると考えてよいでしょうか。
 実は、もう1つ落とし穴があります。
 民法には、短期消滅時効といって、さらに一定の取引から生じる債権について、5年よりも短い時効が定められているからです。
 民法の条文から、代表的なものを確認してみましょう。

  • 建築工事の設計料、施工料、監理料 3年(民法170条2号)
  • 生産者、卸売商人、小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権(いわゆる売掛金) 2年(民法173条1号)
  • 家庭教師や習い事の謝金 2年(民法173条3号)
  • 運送に係る債権 1年(民法174条3号)
  • 旅館の宿泊料、料理店の飲食料 1年(民法174条4号)

 ほかにもたくさんありますが、こうしてみると、取引社会で日々発生している多くの債権が、1年~3年で消滅時効にかかってしまうことがわかります。

4.民法改正ですべて5年に

 しかし、このようなバラバラの取扱いには必ずしも合理性がありません。平成27年第189回国会に提出された民法の改正案では、消滅時効の期間を原則10年から原則5年に短縮し、現在の民法170条から174条までのような短い時効期間の規定を削除することが提案されています。

5.改正前の債権は?

 改正法施行前に発生した債権については、附則により、従前の例によることとされています(附則10条4項)。
 同一の取引によって生じた債権であっても、債権発生と改正法施行の先後により、異なった時効管理が必要になりそうです。

※ 2015年12月31日現在の情報に基づく解説です。

弁護士 馬場 陽
(愛知県弁護士会所属)

(この記事は、税理士法人BLUESKY事務所報2016年1月号に馬場が執筆した原稿をウェブサイト用に一部改変し、発行者の許諾を得て転載しています。)

倒産した売掛先から商品の売主が債権を回収する方法

動産の売主であれば、転売代金の差押えまで考える。

1.取引先の倒産は最大のリスク

 企業にとって、取引先の倒産は最大のリスクです。仕入先(調達先)、売掛先(納品先)の倒産は、企業の酸素、企業の血液ともいうべき「モノ、カネ」の流れを瞬時に止めてしまいます。
 取引の規模によっては、取引先の倒産は、企業が連鎖倒産を意識する緊張の瞬間です。
 今回は、取引先の倒産の中でもとくに相談の多い、売掛金の回収について、商社、メーカーの場合を想定して解説します。

2.通常の回収手段

 債務者が任意に弁済しない(できない)場合、通常、売掛金を回収するためには、民事訴訟を提起して債務名義(通常の場合は確定判決)をとり、債務名義に基づいて強制執行をしなければなりません。
 しかし、こうしたケースでは、債務者に財産がないのが普通ですから、裁判をしている間になけなしの財産が散逸してしまい、強制執行の段階では、すでに差し押さえるべき財産がないということも少なくありません。
 こうしたリスクを避けるために、民事保全法は、仮差押等の保全手続を用意していますが、仮差押をしていても、強制執行が完了する前に債務者が破産してしまえば、売掛金について担保をとっているような例外的な場合でない限り、債務者のなけなしの財産を他の債権者と按分して、僅かな配当を受け取るのが精一杯です。

3.動産売買先取特権とは

 そこで、商社やメーカー等、製品の売主から依頼を受けた弁護士は、動産売買先取特権による差押えの手続を検討しなければなりません。
 先取特権(さきどりとっけん)とは、法律が定めている担保物権の一種で、とくに、動産の売主が、自分が販売した動産(商品)から優先的に売掛金の弁済を受けられるというものを、動産売買の先取特権と呼んでいます(民法311条5号、321条)。
 この場合、債権者である売主は、債務名義をとるために民事訴訟をする必要はなく、いきなり、その動産の差押えを裁判所に申立てることができるのです。

4.物上代位とは

 しかし、売渡した商品がすでに第三者に転売されている場合には、もはや売渡した商品を差し押さえることはできません。
 そこで、民法は、債権者に対し、債務者が転売先に対してもつ代金債権に対しても先取特権を行使することを認めています(民法304条)。
 これを、物上代位といいます。

5.回収は一刻を争います

 物上代位によって先取特権を行使するためには、転売先が債務者に代金を支払う前にこれを差押えなければならないとされており(民法304条但書)、債務者が転売先から代金を受け取ってしまったら、もはや動産売買先取特権を行使することはできません。
 そのため、動産売買先取特権によって債権を回収しようとするのであれば、遅くとも債務者が転売先から代金を受け取る前に、差押えの手続を完了していなければなりません。
 企業としては、同種事件の経験があり、迅速に対応できる弁護士を選択することが重要です。

6.実務上の問題点

 迅速に動産売買先取特権を行使する上で、実務上問題となる点は、商品の同一性です。
 発注書、請書、納品書等の資料が揃っている場合は問題が少ないのですが、業界によっては、発注書の形式が会社ごとに区々であったり、そもそも、発注書、請書が授受されていない業界も存在します。
 このようなケースでは、債権者が販売した商品と債務者が転売した商品の同一性が書類上明らかにならず、製品の規格や寸法、重量等から、商品の同一性を立証する作業が必要となります。
 この作業は、企業の担当者と弁護士が互いに迅速に対応し、数日のうちに何度も打合せを繰り返さなければできない作業であり、それだけに、「企業と弁護士の協同」という企業法務の基本が問われる事件類型です。

弁護士 馬場陽
(愛知県弁護士会所属)

※ 2015年6月11日現在施行されている法令に基づく解説です。